2005年5月1日日曜日

JR福知山線の脱線事故

平成17年4月25日朝、尼崎駅手前で起こった脱線事故は何と死者107人を出すと言う近年にない痛ましい事故でありました。
脱線の直接の原因はカーブ直前でのスピードの出し過ぎではないかと取り沙汰されていますが、原因の如何を問わず先進国の一翼を担い、技術立国を標榜する日本にとってこのような信じられないような事故を起こしたことは真に恥ずかしいことであると思います。日本は航空機産業ではアメリカに太刀打ち出来る状況にありませんので、特に鉄道関係の技術では世界に冠たる技術国であって欲しいものです。この際徹底的にその原因を追究して、2度とこのような悲惨な事故が起きないよう国を挙げて対処して欲しいと思います。
一方、JR西日本の安全軽視体質なども徐々にメディアを通じて明るみに出されていますが、これは単にこの一企業に特有のものではないように思われます。 第一に、アメリカなどに長く生活してみて感じたことは、日本においては航空機、鉄道、船舶等の運輸業者のみならずそれらを利用する客たちの間にも「ダイヤ通りの運行」をより優先し、「安全運行」を二の次にする気風が非常に強いということです。一頃の国鉄の正確無比なダイヤ通りの列車運行は日本社会の美徳の一つとして誇らしいものとされてきました。一方、先進諸国では航空機や鉄道の運行時刻が安易に変更され、そのことがあたかもその社会気風のだらしなさとして軽蔑の眼で見られてきたきらいすらありました。しかしながら、これは裏を返せば日本の社会全体が安全軽視の体質にどっぷり浸かっていたのではないかと思われてなりません。これからは公共交通機関の運輸業者は無理な過密ダイヤを組まないという態度に徹する必要があるのは勿論のこと、それを利用する人たちも「安全運行」を第一としてある程度の余裕をもって移動のスケジュールを立てるという社会的気風を醸成していく必要があると思います。
第二には、大都市の極度の人口集中です。一頃、首都機能の移転が取り沙汰されましたが、昨今ではとんとその声を聞きません。それどころか最近では大都市の中心に続々と高層ビル建設ラッシュが続いており、その反面地方都市の空洞化が伝えられています。小生、世界色々な都市を旅しましたが、少なくとも先進諸国では東京や大阪のような人口集中度の高い例を見ません。外国から帰国する度に感じたことは、諸外国で東京や大阪のような通勤ラッシュがあればこれは暴動が起こっても可笑しくない状態だと感じました。 このような極限状態の中では、いくら高度な新型ATSを導入したとしても、列車運行管理には人為的な要素が必ず残るわけですから、今回起こったような事故を皆無にすることは不可能のような気がします。大都市の人口集中は社会・経済の高度成長期にはこれほど能率の良い環境はなかったと思われますが、低成長期に入り、環境や心のゆとりを大切にする時代にはこのような大都市集中を避けるような施策が一方に於いて必要だと思います。